音楽ジャンルによって使用されるギターの違い
時代の流れによって使用のされ方と役割が大きく変わってきたギター。
ここでは各音楽ジャンルによって使用されるギターと役割について触れようと思う。
クラシック音楽
民族ジャンルを除いて最も古い音楽のジャンルと言えばクラシックだろう。
クラシックといえば大がかりなオーケストラでの演奏を想像する人が多いと思うが、ギターにおいては独奏やアンサンブルがメインである。
クラシックギターおいてはナイロン弦が使用されるクラシックギターが用いられ、独奏やアンサンブルがメインで使用される。
アンサンブルの形態によっては「レキントギター」と呼ばれる少し小さくチューニングも高い設定のものが使用されることがある。
また、先に挙げたオーケストラでも使用されることもあり、その場合はグレッグスモールマンによって作成された「スモールマンギター」というかなり重量感のあるクラシックギターが使用されることがある。
代表的なアーティストとしては「ジョン・ウイリアムス」が挙げられる。
※スターウォーズの作曲者とは別人
クラシックギター自体はスペイン発祥(と言われている)だが、近年は様々な国の製作家によって作られている。
クラシックギターの製作においては人づてに伝承されていくものであるため、作り方の詳細な説明書や設計図を文献で見つけることは困難であるし、あったとしても伝承者の説明がなければより良いギターを作ることも難しいと思われる。
そのため製作家を目指す者は著名な製作家に弟子入りをして修行してから独立することが多く、メーカー名も個人の名前であることが多い。
カントリーミュージック
いわずもがなカントリーミュージック(以下カントリー)では「フォークギター」が使用されている。
カントリーのジャンルは1920年頃に生まれたものだが、フォークギターもその頃に確立されている。
1918年頃により大きい音を出すため、クラシックギターに鉄弦を張ったのが始まりと言われている。
その後強度を補うために内部の力木(ブレーシング)が変更されたり、もっと大きい音を出す為にボディが大きくなって、1930年代に「ドレッドノート」というボディ形状が生まれた。
ひと言で「カントリー」といっても、歌がメインのものもあれば楽器メインの演奏もある。
アコギで超絶速弾きで弾くようなスタイルは「ブルーグラス」、ギター一本で伴奏も含めて弾くスタイルでは「ラグタイム」と呼ばれるジャンルもあるが、広く括ると「カントリー」の一種だと私は解釈している。
フォークソング
その名の通り歌がメインのジャンル。
今では弾き語りと呼ばれることが多く、基本的には一人でギターを弾きながら歌を歌う。
カントリーと同じくアコースティックギター(フォークギターとも呼ばれる)を使用するが、主役はあくまでも歌。
アコギではリズミカルなストロークやムーディなアルペジオという演奏スタイルが主流。
ロック
主にエレキギターが使用されるが、バラードの曲などではアコギやクラシックギターが使用されることもある。
エレキギターはピックアップ(マイク)でも音色が異なるが、ギターアンプやエフェクターでさらに音を加工することができる。
ロックでは主に「歪み」という音色で演奏されることが多い。
「歪み」という概念はチャックベリーというギタリストがアンプの音量を増幅した際に生じた音割れが元となり、今では音色の一つとしてとらえられている。
ポップス
近年、特に日本ではロックとポップスのジャンル的境界がわかりづらい部分もあるが、ポップスというジャンルはほぼ「なんでもアリ」という印象。
ロックは「カッコよさ」に比重が置かれているが、ポップスは曲の「コンセプト」や「伝えたいこと」に応じてバックのサウンドが決められる。
例えばフレッシュな曲の場合のギターはクリーンサウンドのカッティング演奏、ワイルドな曲の場合はロックのような歪みサウンド等だ。
また、ギターを使用して風景や動植物などを表現することすらある。
使用されるギターも様々で「ポップスと言ったらコレ」というギターはほぼ無い。
HR/HM(ハードロック/ヘビーメタル)
近年余り耳にすることが無くなってしまったが、現在のポップスにもHR/HMの要素が含まれていることもよくある。
このジャンルでは見た目が奇抜なエレキギターを使用し、エグめの歪みを使用したサウンドが特徴的だ。
バッキングでは5、6弦を使用したパワーコードがメインで、固めのピックを斜めにしてザクザクとした音色で弾くのが特徴的だ。
また、ギターソロも欠かせないポイントで、ソロの際はテクニックを全面に押し出した速弾きがメイン。
ブルース
本家アメリカでは「ブルーズ」という発音の方が正しい。
ロバートジョンソンを始めとする、アメリカの黒色人種による演奏ジャンル。
奴隷として扱われていた黒色人種の人々が歌を歌った時に、音楽の明暗を決める3度の音(ドミソのミ)が上がりきらず、哀愁を秘めたメロディになったことが始まりという説もある。
元々はロバートジョンソンのようにアコギ一本で弾き語りをしながら放浪していた演奏者達だったが、ある時からラジオなどで日の目をみるようになり、バンドでも演奏されるようになる。
カントリーやフォークとは異なり、4、5、6弦を使用したシャッフルリズムのサウンドが特徴的だ。
当時はお金のない黒色人種たちがなんとか(もしくは偶然)手に入れたギターを使用していたらしく、「ブルースを演奏する為にこのギターを使用しよう」などと考える余裕すらなかったと思われる。
ブルースから後々様々な派生ジャンルが生まれ、現在の音楽シーンに多大な影響を与えることとなる。
ファンク、ダンスミュージック
元々はブルースの派生ジャンル。
ファンクでは主にエレキギターが使用される。
複数本の弦を素早くいっぺんに弾く「カッティング」と呼ばれる演奏方法が主流で、「チャカチャカ」とリズミックなサウンドが特徴的。
ピッキングのニュアンスが表現しやすいシングルコイルと呼ばれるピックアップが搭載されたエレキギターが好まれるが、稀にハムバッキングのピックアップを使用する演奏者もいる(アルマッケイ、ブルースコンテなど)。
現在ではK-POPやアイドルグループなどのバックサウンドはファンクが主体となり、16ビートのリズムがメイン。
ジャズ
ブルースを始め、様々な民族音楽が合わさってアメリカで発生した音楽。
ひと言でジャズといっても色々な形態があり、使用されるギターの種類や役割も様々である。
以前はGibson社のフルアコースティックギター(通称フルアコ)と呼ばれるエレキギターが主に使用されていた。
※名前から勘違いされやすいがアコースティックギターとは性質が異なるギター
ビッグバンドではコンピングと呼ばれるバッキング演奏が主体で、リズムは4ビート。
カルテットではピアノなどと並んで通称ウワモノと呼ばれ、メロディやギターソロを演奏することも。
サウンドはクリーンが主体だが、現在ではロック系で使用される歪みサウンドが使用されることも増えてきている。
フュージョン
直訳すると「融合」となるように、ジャズをメインとして様々なジャンルを合わせた音楽ジャンル。
ジャズとの違いが難しく、「ジャズフュージョン」と呼ばれることもしばしばある。
ギターが主体となることも多くアメリカではパットメセニー、日本では高中正義などが有名どころである。
使用楽器はジャズとは異なりソリッドタイプのエレキギターが使用されることが多いが、これといった決まりは無く、演奏者によって様々である。
エフェクターもよく使用されており、表現の幅が広いサウンドが特徴的だ。
ソロギター
「ギターソロ」と呼び名が逆になっただけだが、意味合いは全然異なるもの。
主にアコギを使用したメロディと伴奏を同時に演奏するスタイルのこと。
有名どころとしてはトミーエマニュエル、日本だと押尾コータローがいる。
丁寧にメロディと伴奏を弾き分けるスタイルから、スラム奏法と呼ばれるリズミカルにボディをバシバシ叩くような演奏スタイルまで近年多様化している。
スラム奏法の場合、アコギの強度によっては傷や破損などの原因になるので注意が必要だ。
コロナ禍では「お家で一人で楽しめる」と人気が再熱したことが印象深い。
まとめ
以上が「音楽ジャンルによって使用されるギターの違い」となるが、忘れていることも多々あると思うので思い出した際は追記をしていきたいと思う。
ここではザっと紹介したが、深掘りするともっとたくさん書きたいことがあるのでジャンル各々でもリンクを書いていこうと考えている。
また、ここで書かれている内容はあくまで「参考」としてとらえ、好みや趣向などに応じてカスタマイズしていただくことを推奨します。
※クラシックギターは例外ですが…
以上